我々の生活環境には、医療現場における直流強磁場のMRI、高圧線や家電製品からの商用周波変動電磁場、IHクッキングヒーターからの中間周波数帯電磁場、携帯電話を代表とした高周波電磁場などがあり、電磁場環境における生体影響のメカニズム解明と理解が大きな社会的要請となっている。これまで、電磁場曝露による細胞や遺伝子レベルでの明確な応答を定量的に解析し、線量−効果関係に基づくしきい値の推定ならびに電磁場に対する分子生物学的な応答のメカニズム解明を目的として研究を行ってきている。さらに、生命科学的に明確な電磁場効果については、医療・健康面における積極的な活用を探究している。影響評価の観点では、遺伝毒性(染色体異常、遺伝子突然変異、DNA損傷など)、遺伝子発現やシグナル伝達機構などの電磁場応答の有無やその機構について研究成果を発表してきた。また、医療応用面では、再生・移植医療における基礎研究として、電磁場によるバイオ人工膵の活性化などの成果を発表してきた。また、WHO, IARCICNIRPのメンバーとして電磁場の生体影響について、国際的評価会議に参加している。