宇宙空間の基礎物理過程の研究

宇宙空間は、宇宙線に代表される高エネルギー放射線が飛び交う場であり、通信・放送衛星や宇宙基地を構成する材料や電子機器はこれらの放射線の影響を受けて、劣化や様々な障害を起こします。この宇宙放射線環境は、太陽活動の変化に起因する磁気嵐によって大きく変動し、有人宇宙活動及び宇宙機器に悪影響を及ぼします。さらに、極域オーロラ帯への降下粒子が増加して、超高層大気が加熱され大気抵抗が増大するため、低高度衛星の軌道にも深刻な影響を与えます。磁気嵐の発生に伴う宇宙環境の急激な変動への対策は、観測と経験に基づいてなされていますが、その詳細な物理過程の研究とそれに基づく定量的な評価は殆どなされていないのが現状です。本研究では、放射線帯高エネルギー電子の生成過程やオーロラ帯への降下粒子のフラックス変動過程等を計算機シミュレーション(計算機実験)によって再現し、宇宙空間の基礎的な物理過程を理論的に解明することに取り組んでいます。

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宇宙環境診断技術と宇宙天気数値モデルの開発に関する研究

宇宙開発利用を安全に遂行するためには、宇宙環境の精確な診断と予測が不可欠です。しかし、宇宙環境を広域にわたって同時に計測することは難しく、宇宙機器の機能障害を予防するための能動的な対処は困難でした。的確な状況把握に基づく対処を可能とするため、宇宙空間の状態(宇宙天気)をリアルタイムで知ることが求められています。この要請に応えるため、電磁気学的手法による計算機シミュレーションを軸とした宇宙環境診断技術の確立と、予測可能な宇宙天気数値モデルの開発に取り組んでいます。計算機の中で放射線帯やオーロラなどを自発的に且つリアルタイムに発生させ、宇宙機の安全な運用のための宇宙天気予報技術を獲得するのが目標です。また、多次元で表現されるシミュレーションの結果を的確に診断するために、可視化技術の開発にも取り組んでいます。

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